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カラフル

「医薬品の色」について考えたことありますか?

薬の色が持つ重要な役割について

市販薬や医薬品として販売されている薬には必ず特定の色や形があります。

薬についてあまり詳しくない人にとってはこれらは単なるデザインによるもののように思えますが、実はこれは誤飲を防ぐという重要な役目によるものです。

わかりやすいのカプセル薬ですが、中身の錠剤が半透明に見えるようになっていつつもう半分には赤や黄色などといったさまざまな色が使われています。この色も自由に使うことができるわけではなく、含有されている成分がどのようなものであるかによって厳密に使用される色が決められています。

錠剤として販売されている薬品も、ただ白いものだけでなく青っぽいものや黄色っぽいものなど色々な種類があることがわかります。この錠剤の色ももともとの薬品が持っている色ではなく、人為的に後付されたものです。

普段病気治療のために服用するときには特に色を意識することなく処方されたものとして使用をすれば問題はありませんが、これが薬剤師として調剤をする立場になるとそういうわけにはいきません。この薬の形状については国家試験にも出る重要な項目なので、しっかり意味と種類を覚えていく必要があります。

薬に色が付けられるようになったのは60年代から

今では当たり前に薬に色が付けられるようになっていますが、実はこの規定がつくられたのは1960年代に入ってからと比較的新しいものです。

日本において本格的に導入をされたのはさらに遅れて70年代になってからなので、現在40~50代くらいの人は子供の時には色のない薬を飲んでいたということになります。

なぜこの時代に急激に色付きの薬が普及することになったかというと、それまでなかった「ソフトジェル」というタイプの薬が数多く出されるようになったということが関係しています。「ソフトジェル」とは柔らかい外殻の内部に薬品を詰めたもので、言わばオブラートを丸いケース状にしたものと言えます。

このソフトジェルタイプの薬に使われる素材はかなり汎用性が高く、色や形を自由に変化させることができます。現在ではまるで宝石のような美しい形状の薬として販売されているようなものもあり、こうした高い製薬技術が日本に入ってきたことが色付きの薬が普及する大きな原動力となったのです。

ソフトジェル以外にも通常のカプセル薬や錠剤にも同じように色が使われるようになっていますが、こちらは安全で安価な着色料ができたというとことも関係しています。薬に着色料が入っているというとなんだか不安に感じる人もいるかもしれませんが、ここで使用されるもののほとんどが植物由来のものなのでそのために健康を害するという心配はありません。

象徴的な色を持つ医薬品

バイアグラの服用・処方について@浜松町第一クリニック
画像参考:バイアグラの服用・処方について@浜松町第一クリニック

医薬品によっては、象徴的な色を持つ医薬品も存在します。

例えば、ED治療薬として日本でもお馴染の「バイアグラ」が良い例でしょう。販売当初のバイアグラは、その画期的な効果と錠剤の色を称して、米国で「ブルーダイヤモンド」と呼ばれていたほどです。販売から20年以上経った今日においても、青色はバイアグラを象徴する色として認知されています。日本国内において、バイアグラの処方には医者の診療が必要となりますが、一部の国では、その需要の高さからドラッグストアで手に入るようになっています。

さらに、傷口の殺菌に使われていた「赤チン」のように、本来の製品名(マーキュロクロム液)があるにも関わらず、解りやすい呼び名のほうが世間的に定着してしまうケースもあります。ちなみに赤チンは販売不振に伴い、2020年で国内生産が終了しますが、消費が低迷していようとも、赤チンという名前がずっと認知され続けているのは、消毒薬として定番となった結果とも言えるでしょう。

プラセーボ効果にもつながる色

薬につけられている色が持つもう一つ重要な役割となっているのがプラセーボ効果への影響です。
プラセーボ効果とは、実際には何の効果もない薬であっても「これを飲めば治る」と思い込んで飲むことで病状の改善を期待することができることです。

私達は普段の食事でも目に入る色や形で「おいしそう」「まずそう」といった判断をしますが、これは薬においても同様で見た目が「効きそう」「効かなそう」といった印象につながっていきます。

よりシャープで美しい薬品はやはり飲む方にとっても信頼感があるものなので、特に新薬などでは規定に従いつつもデザイン面に工夫をするということがあります。