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畳間で相談に乗る薬剤師

訪問薬剤師という仕事

薬剤師にも広がる在宅医療のニーズ

看護や介護が必要な人が病院などの医療施設ではなく自宅で診療を受けられるようにする在宅医療のニーズは年々高まってきています。
高齢者が増加したことにより病院施設の病床数が間に合わなくなってきたということもありますが、何よりも入院をすることによって高額化する医療費を抑制するということが一番の目的です。

そこで訪問介護や看護ができる介護士や看護師のニーズはここ数年で急増してきているのですが、その流れで同じように必要とされているのが訪問医療ができる薬剤師の人材です。

薬剤師はほかの医療系資格者と比較して勤務できる場所の幅が広い仕事としてもよく知られていますが、そこにさらに訪問診療という仕事が加わったということになります。

既に看護や介護の現場では訪問診療を専門に行う業者などが数多く登場していますが、薬剤師の場合はほとんどの場合調剤薬局もしくは病院の薬剤部の一部として訪問も行うという方法になっているようです。
実施状況としては今後予定しているというところが全体の約3割程度となっており、人材がそろい次第開始していくというのが現状です。

一方で今後も実施する予定はないとしている調剤薬局や病院は全体の1割程度おり、一般的な導入に向けてはまだまだ課題があるという側面もあります。

なぜ薬剤師が訪問医療に必要か

薬剤師の訪問医療がなかなか一般化しない理由の一つとして考えられるのが、その仕事内容や社会的な意義が現場にうまく認知されていないということです。
いろいろな職場はあるものの薬剤師の仕事というのは基本的には特定の施設にいて、処方箋を持って訪れる患者さんに対して薬を調剤して出すということです。

ですのでイメージ的には在宅医療における薬剤師といっても、せいぜい処方箋に従って薬を配達していくというくらいにしかとらえられていないのではないかというふうにも思えます。

しかし実際には訪問薬剤師としての仕事は単に薬を届けてその説明をするだけではなく、その患者さんが過ごしている状況や健康管理についてその場の様子で判断し、それを前提とした調剤をするという非常に重要なものです。
出された薬がきちんと飲まれているかやどういった保管状況にあるかということを調べるとともに、身体機能としてその薬はきちんと飲めるものかというような判断をすることは実際に現場に行かないことにはできません。

それだけに調剤薬局で薬を出す仕事をしている薬剤師とは異なるスキルが求められることになるので、そのあたりの育成も今後の大きな課題と言えるでしょう。

薬剤師の訪問診療のパターンについて

訪問看護の場合ならば、専門の看護師バンクや地域の医療センターに登録している人が要請を受けることでそれぞれの患者さんのところに向かうというような形がしっかり作られています。

しかし薬剤師の場合はまだ訪問薬剤師という仕事がしっかり確立していないということもあり、実際に仕事をしようとしてもどこでどういった手続きをすればよいかわからないということもあります。

訪問薬剤師の派遣のパターンとしては大きく4つがあり、それぞれ「医療機関から」「薬局から」「介護支援施設から」「その他の多種施設から」というふうになっています。

このうち現在主流となっているのが「医療機関から」の方法で、入院待ちや定期的に訪問診療を受けている人に対して必要に応じて薬剤師が派遣されるというチーム医療の一部として機能することになっています。
問題はそのほかの3つのケースで、これらは直接的に医師や歯科医師からの指示が出されるわけではないので必ずしも薬剤師が訪問をしなくてもよいということになっています。

ですが前述したように薬剤師が直接訪問をすることによって明らかになる問題点などもありますので、他の医療機関以外の施設とどのように連携をとっていくかによりまた訪問薬剤師の役割や重要度が変化してきます。